長戸大幸 イズム’s blog

ビーイングミュージシャンに関する記事です。

小松未歩

小松未歩さんは1997年5月28日に1st Sg「謎」でデビューしました。その年の12月に発売された「謎」を含む1st AL『謎』は50万枚を売り上げ、早くも存在感のあるアーティストとして始動していきました。そして翌年12月にリリースされた2nd AL『小松未歩 2nd ~未来~』は売り上げ枚数70万を記録しました。小松さんは今まで1度も音楽番組に出演して歌を披露した事はありません。しかし、多くの方の記憶に残る音楽を輩出し続けてきました。彼女は一体どの様にして音楽制作に挑んだのでしょうか?
大手航空会社勤務だった小松未歩さんは、音楽制作会社ビーイング系列のビーグラム大阪で行われた、中途採用の社員面接に訪れました。この時、プロデューサーの長戸大幸さんと出会います。長戸プロデューサーは、社員募集で来た彼女に、作曲をしてみるようにと勧めます。しかしそれまで彼女は作曲デモを作成した事はありませんでした。では何故、そんな小松さんにプロデューサーは作曲を勧めたのでしょうか?今回は特に作曲について取り上げます。

小松さんはカラオケで歌う事が好きでした。しかしそれは、当時のヒット曲、過去の大ヒット曲なら全て歌えるという、単なる趣味という領域を越えて特技ともいうべき領域に達していました。
プロデューサーの理論の1つに、“人間はインプットしたものしか、アウトプットしない”というのがあります。
もしもアナウンサーを志望するのであれば、標準語を話せる事が必須ですから、共通語(東京弁が元になった言葉)を離さない地域で育った人は特に、標準語を学び、訛りを取る必要があります。それは必ず標準語だけが口から出るよう慣れておく為です。一方アナウンサーは、標準語以外の色々な方言を習得する必要はありません。もしも学ぶ機会があって知っていたとしたら、その人はうっかり訛る可能性もあるわけです。でも標準語だけを学んでいれば、少なくとも生まれ育った地域以外の訛りは出て来ないはずです。
もしもヒット・メーカーになるなら、ヒット曲に詳しい事は必須です。小松未歩さんがヒット曲を沢山知っているというのは、知らず知らずのうちにヒット曲のツボ、例えば曲の展開、サビの出だし、琴線に触れる部分等も心得ている可能性があります。なので、彼女から生まれてくるメロディはヒット曲になるのではないか、という事です。

次にプロデューサーはデモを作る際にキーボード1本で作るように指示します。小松さんの最初に作られたデモは、96年8月26日に作られたもので、O-K-1(ギザでは小松さんの場合はKというように作家毎にデモ番号をつけています)、仮タイトルは「レイン」です。それは歌いながらキーボードを弾いているスタイルなのですが、なんとこの曲は指1本でキーボードを弾いているのです。しかし、歌のメロディとキーボードのライン、それだけで十分曲として成立しています。キーボードはベースラインのみという事でもありません。常に指1本だけなのに、メロディの間を縫うフレーズで、コード感や曲の最終形まで見えてくるかのようです。絵画でいうと簡単なデッサンなのに色彩や立体感も感じられるようなものです。このデモはプロデューサーの指示で1年後に小松さんが手直しして、結局「おとぎ話」という曲になり1stアルバム『謎』に収録されています。
プロデューサーの理論に、“作曲家は楽器が上手くない方がヒット曲をつくれる。”“楽器の上手い人は楽器が巧くならなければならない過程でヒット曲以外の曲をコピーしインプットしている。よって大衆音楽ではヒット曲を書く作曲家は楽器の下手な人の方が多い。”というのがあります。
もしも楽器を上手く弾けるようになりたかったら、段々難しい曲をコピーするようになっていき、そうした曲がインプットされていきます。それは超絶技巧の曲だったり、あるいはポピュラリティではない曲だったりします。すると作曲をする際に、覚えた難しい曲がうっかり出てくる恐れがあります。ヒット曲の醍醐味にあまり詳しくなれず、音楽の違う観点に詳しくなる、という事になります。もちろん、音楽家としては間違っていません。これはあくまでヒット曲を作る場合の話です。

こうして小松さんが作曲デモを作り始めて4ヵ月弱経った96年12月16日、30曲目のO-K-30、仮タイトル「夕映え」というデモが出来てきました。これにプロデューサーが直しの指示をして出来上がったのが8日後の24日。メロディとしてはこれで決定しました。既に歌詞にも「謎」という言葉が入っていました。これはテレビ用アニメ[名探偵コナン]オープニングテーマとしてプレゼンするものでしたので、[コナン]の内容も意識した「謎」という言葉が鍵となり、結局タイトルも「謎」になりました。
このデモのキーボードは指2~3本でした。プロデューサーはアレンジャーの古井弘人さん(Garnet Crow)に、鍵盤を沢山押さえて引く方式ではなく、デモのキーボードフレーズのコピーをするよう指示しました。ヴォーカル・トラックはダブる(2ch使う方式)事になりました。ビートルズジョン・レノンが必ずやっていた手法で、コーラス効果もあって声の押し出しも強くなります。

こうして試行錯誤しながら完成した「謎」はオリコン最高位9位を記録し、末永く愛されました。長戸プロデューサーの判断と導き方、小松さんの才能と努力が実を結んだと言えましょう。ちなみに余談ですが、「謎」のデモの直しの完成した時に彼女は、それ以外に4曲持ってきましたが、これらはどれも直し無しで製品になっています。2nd SgのC/W「傷あとをたどれば」、2nd AL『小松未歩 2nd ~未来~』収録の「未来」、3rd AL『小松未歩 3rd ~everywhere~』 収録の「夢と現実の狭間」、そして辻尾有紗さんの1st Sg「青い空に出逢えた」です。
もしも機会があれば、今一度小松未歩さんの作品を聴いてみて下さい。そこには多くの人を魅了する宝物が一杯詰まっているはずです。

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